@phdthesis{oai:konan-u.repo.nii.ac.jp:00004382, author = {杉本, 渉 and SUGIMOTO, Wataru}, month = {2022-06-03, 2022-06-03}, note = {令和3年度(2021年度), application/pdf, 様々なシグナル経路を活性化するハブとして機能し、細胞の生存や増殖を制御するRASは、多くのがん細胞で恒常的に活性化し、がんの悪性化を誘導する。そのため、RASの分子標的薬は有効性の高いがん治療薬になると考えられており、世界中で研究開発が行われてきた。しかし、タンパク質の構造的な特徴などから開発が進まず、RASは現在“Undruggable”なタンパク質であることが広く認知されている。そこで、RASシグナル経路の上流や下流で作用する分子を標的とした薬剤の開発が進められてきたが、RASは多様なシグナル経路を活性化するため、単一のシグナル経路を阻害しても、他のシグナル経路が活性化し、がん細胞が薬剤耐性を獲得することが喫緊の課題となっている。そのため、RASを直接標的にできる薬剤の開発は依然として強く望まれている。一方、RASシグナルを標的とした分子標的薬などの多剤併用療法は、がんに対して高い治療効果をもつことがわかってきており、RASシグナル経路を制御する薬剤の開発および新規創薬標的分子の同定への期待も大きい。 そこで本研究では、RASシグナル経路における新規創薬標的分子の同定を目的として、RASが惹起するがん細胞の浸潤・転移において重要な役割を果たす細胞移動に直接的に関わるアクチン動態制御機構の解明、また浸潤・転移の前に引き起こる上皮間葉転換に関わるTMPRSS2/ERGの発現制御機構の解明を試みた。さらに、分子標的が困難なRASの活性を制御する新たな手法として、RASをコードするmRNAに選択的に結合するフタロシアニン誘導体を用いたRASの発現抑制方法について検討した。 第3章では、RASによる浸潤・転移に関わるアクチン動態の制御機構の解明を目的として、がん抑制因子p53の不活性化にともないがん遺伝子RASが誘導するアクチン線維構造の一つであるラメリポディアの形成機構において、NF-κBが重要な分子であることを同定した。第4章では、TMPRSS2/ERGの発現制御において、TMPRSS2遺伝子のエクソン2で形成される四重鎖構造が、転写活性を制御するスイッチとして機能している可能性を明らかにした。第5章では、光増感能を有するフタロシアニン誘導体zinc phthalocyanine tetrasulfonate(ZnAPC)が、光照射依存的にRASの発現を抑制することを明らかにした。ZnAPCは、RAS mRNAの5’UTR領域で形成される四重鎖構造に選択的に結合し、結合したZnAPCは、光照射によってRAS mRNAを分解し、それによってRASタンパク質の発現を抑制するとともに、細胞死を誘導した。 以上のように本研究では、がんの治療に極めて重要であるRASシグナル経路に関して、新たな治療標的分子を同定し、シグナル分子の遺伝子発現機構を解明することができた。さらに、これまで困難とされてきたRASの発現を制御できる分子標的薬候補の開発にも成功した。これらの結果は、がん治療における新たな標的タンパク質を提示するだけでなく、タンパク質をコードするDNAやRNAの四重鎖構造を狙った創薬も可能であることを示している。これらの知見は、創薬の標的やモダリティーを拡張することで、新しいがん治療法の確立につながると期待される。}, school = {甲南大学}, title = {がん悪性化を惹起するRASシグナルに対する制御法の探索と解析}, year = {}, yomi = {スギモト, ワタル} }