@phdthesis{oai:konan-u.repo.nii.ac.jp:00004381, author = {後藤, 俊志 and GOTO, Toshiyuki}, month = {2022-06-03, 2022-06-03}, note = {令和3年度(2021年度), application/pdf, 動物胚の形態形成は、胚の背腹や左右の向きを決定する体軸形成が端緒となる。この体軸形成には、胚内における特定の母性決定因子(タンパク質、mRNA)が偏在することで生じる非対称性が必須である。胚に非対称性が生じるメカニズムは生物固有のものであるが、多くの動物で細胞骨格に依存していることが知られている。従って、動物の形態形成を理解するためには、細胞骨格依存的な物質輸送によって胚に非対称性が生じるメカニズムを理解することが強く求められる。 ホヤでは、1細胞期に明確な境界を持った2つのオルガネラドメイン(ミトコンドリアおよびER)により構成されるMyoplasmやその領域に存在する母性mRNAが非対称化することが知られている。細胞質再配置と呼ばれるこの現象は、正常な前後軸形成や細胞分化に必須であることから、発生の最も初期に見られる運命決定機構とされている。しかし、細胞骨格依存的な二段階の再配置(それぞれアクチン繊維および微小管に依存的な移動)が見られるなど細胞質再配置の俯瞰的なメカニズムはすでに明らかにされているが、移動に関わる分子構造やその制御機構など解明されていない点が多く残されている。そこで私は、細胞質再配置の分子メカニズムを明らかにすることで、ホヤの形態形成メカニズムの解明を目的とした。 まず、細胞質再配置の経時変化を詳細に分類することで、細胞質再配置が減数分裂の進行と強い相関を持って進行していることを明らかにした。さらに阻害剤の添加実験により、受精直後のCalcium signalingがアクチン繊維の植物極への再構成を誘導することで第一再配置が行われていることを確認し、第二再配置は細胞周期調節因子であるCDKおよびMAP kinaseによる制御を受けていることを明らかにした。従って、受精を引き金とする種々のシグナル伝達が細胞質再配置のペースメーカーとなっていることが期待される。 次に、細胞質再配置の駆動力である細胞骨格に着目した解析を実施した。アクチン観察手法の最適化により、植物極におけるアクチン繊維の局在は第二再配置まで維持されていることを発見し、阻害剤実験からこの局在が第二再配置を制御していることを明らかにした。この結果は、Myoplasmがアクチン繊維から微小管依存的な移動へと切り替わる遷移過程であることを示唆している。また、微小管観察手法の最適化により、第二再配置の後極表層で発達したレール様の微小管構造Cortical Array of Microtubules in Posterior-vegetal region (CAMP)が形成されることを発見した。さらに複数分子を同時に観察可能な染色法を開発することで、CAMPはMyoplasmのER領域に形成される一方で、母性mRNAは第二再配置までにERから一時的に乖離しながらも後極へと移動することを示した。これは、ERの移動にはCAMPが、母性mRNAの移動には他の構造が関与していることを示唆している。 以上の結果は、卵という巨大な細胞において、受精に伴うシグナル伝達が適切なタイミングで細胞骨格を制御し、オルガネラやmRNAがそれぞれ適切な細胞骨格へと巧妙に乗り継ぐことで適切な場所へと移動する複雑でかつ洗礼された物質輸送が存在していることを示している。一方で、物質輸送は体細胞においても普遍的に見られる現象であり、細胞質再配置のより詳細な分子メカニズムを明らかにすることで、形態形成に関する新しい理解を得られるだけでなく、体細胞の物質輸送における未知のメカニズム解明に貢献することも期待される。}, school = {甲南大学}, title = {ホヤ1細胞期における母性決定因子輸送機構の解明}, year = {}, yomi = {ゴトウ, トシユキ} }