@phdthesis{oai:konan-u.repo.nii.ac.jp:00003105, author = {木下, 雅博 and Kinoshita, Masahiro}, month = {2019-02-28, 2018-06-23}, note = {平成29年度(2017年度), application/pdf, 本論文の目的は、児童期における遊びが社会的適応に与える影響を、児童の仲間関係に焦点を当てて実証的に検討することである。 児童期は、家庭の外部との関係の中で社会へと適応していく時期であり、その中でも、児童期後期は児童同士の中で社会的適応を向上させることが予測されるため、社会的適応において重要な時期である。子どもが児童期に体験する仲間関係において、遊びは大きな部分を占め、社会的適応の向上に貢献すると論じられている。しかし、そうした議論の多くは、著者の経験や子ども感に基づくもので、現実の子どもから得た客観的データの分析による実証的研究は未だ少ない。また、近年遊びの形態や仲間関係のあり方など、遊びに関する状況に大きな変化が起こっており、過去の考察が現代の子どもについてどこまで妥当か不明である。 本研究で木下氏は、現代日本の児童を対象にして、遊びを測定する質問紙の作成によって、遊びが社会的適応に与える影響を、実証的に検討する。社会的適応については、子どもが多くの時間を過ごし、大人と子ども、子ども同士それぞれの関係を経験する「学校」という社会を対象とし、子どもの遊びのあり方、遊びにおける仲間関係に着目して、学校における適応との関係を検討する。 この目的を達成するために、木下氏は、遊びに関する尺度であるプレイフルネス尺度の使用可能性を検討したのち、遊びの研究方法を先行研究の概観によって検討し、新たな測定尺度の作成を行う。そして作成された尺度を用いた調査によって、学校における適応と遊びとの関連を検討していく。  第1章においては、遊びの先行研究を概観したのち、遊びの要素のうち場所や人数などの外的環境を除いた子ども自身の認識する内的側面を扱うプレイフルネスの概念に注目し、それを行動特性より定着し人格特性ほど安定的ではない遊びに対する態度と定義する。そして、児童期の子どもを対象に、プレイフルネスを測定する子ども自身による自己評価尺度を作成する。衝動性の高い子どもについてはプレイフルネスによって衝動性を制御することが困難と考えられることから、衝動制御の高さによって群分けし、仮説1:プレイフルネスの他者と遊ぶ態度が高い児童ほどポジティブな社会的行動が高い、および、仮説2:衝動制御が高い児童において、プレイフルネスの他者と遊ぶ態度が高い児童ほどネガティブな社会的行動が低い、の2仮説の検証を行った。結果、仮設1のみが支持された。また、データの検討から、遊びを共にする人数によって影響が異なると思われたため、少人数群、中人数群、大人数群に群分けして検討したところ、中人数群のみ、友人グループ内の態度が、社会的行動に影響を与えないという現象が見られた。これを木下氏は、内的ルールを共有するギャング・グループと呼ばれるグループの特質によるものと解釈している。 プレイフルネス概念の検討から、アメリカ起源の同概念が日本の現在の子どもの遊び研究に適合しない点を認める木下氏は、第2章において、より幅広い観点から遊びの実証的先行研究を渉猟し、質問紙をはじめとする研究方法を再検討し、子ども自身によって評定可能な新たな質問紙尺度の必要性を認める。その議論を受けて行われた研究が、第3章以降の研究である。 第3章において、木下氏は、現代日本の児童が行う遊びの測定に適切な尺度の開発を行うことを目的に、測定対象を「遊び体験」と定義し、「遊び体験尺度」の開発を行う。現在の子どもの遊び体験の実態に基づく尺度を開発するため、予備調査として小学5、6年生を対象に遊びに関する自由記述式の調査を行う。子どもが認識した遊び行動と遊び感情の2側面を総合して遊び体験として捉え、予備調査の結果から質問項目を抽出して、尺度を構成する。作成した尺度を小学4~6年生を対象に実施し、因子分析の結果抽出された3因子を、それぞれ「カタルシス感情」「在来遊び」「ゲーム機遊び」と命名する。併存的妥当性の検討のために、第2章で用いたプレイフルネス尺度も合わせて実施している。  得られた3因子構造は、遊びを「外遊び」「内遊び」に分類する従来の研究と異なっており、ゲーム機遊びが子どもにとって重要なカテゴリとして遊び研究に欠かせない対象であることを示している。  以上のように作成された尺度を用いて、木下氏は第4章において、遊び体験が学級適応に与える影響を検討する作業を行う。まず、適応概念を整理して外的適応と内的適応に分け、それぞれの概念を検討した上で、「遊び行動」が外的適応に影響し、「遊び感情」が内的適応に影響するという影響モデルを構成し、遊び体験における遊び感情が内的学級適応に影響を与え、遊び体験における遊び行動が外的学級適応に影響を与えるというモデルを採用する。  そして、遊びが適応に与える影響の先行研究の調査に基づき、在来遊び、ゲーム機遊びそれぞれについて次の仮説を立てる。 仮説1:在来遊びは規範遵守の態度および学業に対する態度を強めない。 仮説2:在来遊びを複数人で遊ぶ児童は、在来遊びが行事への参加の態度を強める。 仮説3:ゲーム機遊びを個人で遊ぶ児童は、ゲーム機遊びが学業に対する態度および行事への参加に対する態度を弱める。 仮説4:在来遊びを複数人で遊ぶ児童は、遊び感情を多く感じるほど、居場所感および被信頼・受容感が高い。  調査は、関東・近畿地方(1府3県)に存在する小学校10校(中核都市1校、衛星都市2校、都市と自然が混在した地域2校、自然豊かな地域5校)に在籍する5・6年生の児童889名を調査対象として行われ、記入漏れのない児童869名(5年生:男児192名、女児217名、6年生:男児233名、女児227名)が分析の対象となった。  データ分析の結果、仮説1、仮説3は支持され、仮説2、仮説4は部分的に支持された。遊び体験が、内的適応を媒介して外的適応に影響を与えることが示唆されるとともに、学級適応を高める際の、遊びの内容および遊び人数の重要性が明らかになった。在来遊びは社会性を高め、ゲーム機遊びは学業を妨げるとされているが、遊ぶ人数がその影響に関与しており、一人で遊ぶよりも仲間とともに遊んだ方がポジティブな影響を学級適応に与えていた。  本研究を総合し、次のような構造が示唆された。相互に影響し合う遊び行動と遊び感情を総合して遊び体験となり、遊び体験の中で遊びに対する態度が生み出され、遊びに対する態度は新たな遊び行動として表れる。さらに遊びに対する態度は、社会的行動を促進、あるいは抑制し、社会的行動は外的学級適応と内的学級適応の基礎となる。一方、遊び行動は外的学級適応を向上、あるいは低下させ、遊び体験内の遊び感情は内的学級適応を向上させる。そして、内的学級適応は外的学級適応を向上させる。遊び体験が出発点となり、遊びに対する態度や社会的行動を媒介して、最終的に外的学級適応に影響を与える構造が見られ、最終的に遊び体験の重要性が示された。}, school = {甲南大学}, title = {児童期の遊びが社会的適応に与える影響に関する実証的研究―児童の仲間関係に着目して―}, year = {}, yomi = {キノシタ, マサヒロ} }